ダイエットの為に食事の量を減らす、摂取カロリーを減らす。
間違ってはいないですよね。
では、同量カロリーの食事でも、その食事内容によってはダイエットの効果をより高める事が出来るという事をご存知ですか?
今回はそんな、ダイエット効果を高めることに繋がる【食事誘発性熱産生】について紹介したいと思います。
食事誘発性熱産生とは
厚生労働省(*1)によると、
『食事をした後、安静にしていても代謝量が増大すること。』
として、食事を摂ると体内に吸収された栄養素が分解され、
その一部が体熱となって消費されます。
このため食事をした後は、安静にしていても代謝量が増えます。
この代謝の増加を食事誘発性熱産生(DIT: Diet Induced Thermogenesis)または特異動的作用(SDA: Specific Dynamic Action)といいます。』と記述しています。
簡潔に表現すると、食べたものを分解・代謝するのにエネルギー(カロリー)が使われ、その際に熱が発生して代謝が上がる事ですね。
■実際の生活にどのように作用していくのか
ここでオランダのマーストリヒト大学が発表した論文(*2)に掲載されたチャートを見てみたいと思います。
こちらのチャートは、縦軸は「代謝率」、横軸は「時間」で表され、一般的な1日3食の食事における代謝率の変動を表しています。(時間軸と平行の点線は安静時代謝率を表しています。)
このチャートを見ると、食事誘発性熱産生が毎食後に生じて、代謝率が上昇しているのが分かると思います。
そしてその後、数時間に渡って代謝率が高いまま移行しているのも見てとれると思います。
『朝食はちゃんと食べたほうが良い』とか『ダイエットのためには一日4~5食にすると良い』と言うようなことを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
そう言われる理由がこのチャートからも分かるかと思います。
■どれくらいのカロリーが消費されるの?
先程、食べたものを分解・代謝するのにエネルギーが使われると書きました。
それでは実際どれぐらいのカロリーが、この食事誘発性熱産生によって消費されるのでしょうか?
厚生労働省によると、食事の約10%程度としています。
マーストリヒト大学の論文では、PFCバランス(タンパク質・脂質・炭水化物)が違う食事を摂取して、
それに伴う食事誘発性熱産生によるカロリー消費を比べています。
その結果として食事によるカロリーの5~15%が食事誘発性熱産生によって消費されることが報告されています。
つまり、一日2000kcalの食事の場合100~300kcalが消費されていることになりますね。
さらに言うと、食事の中身(PFCバランス)が違うだけで一日に200kcalの差が生じるということになります。
たかが200kcalと思うかもしれませんが、計算上は一か月に約1㎏体重を減らすのに十分なカロリー量です。
■栄養素別でみる食事誘発性熱産生
ここから先は、もう少し詳しく栄養素の種類で見てみたいと思います。
厚生労働省によると、『タンパク質のみを摂取したときは摂取エネルギーの約30%、糖質のみの場合は約6%、脂質のみの場合は約4%』
が食事誘発性熱産生によって消費されるとしています。
そして、マーストリヒト大学の論文では、『タンパク質は20~30%、炭水化物は5~10%、脂質は0~3%』
と記述しています。
詰まる所『高タンパクで低脂質の食事の方がより多くのエネルギーを食事誘発性熱産生によって消費する』ということになりますね。
■高タンパクの食事と満腹感の関係について
また、別の海外の論文(*3)には、高タンパクの食事と満腹感(腹持ち)、ウェイトロスに関して記述しているものがあります。
こちらによると、
『高タンパクの食事は低タンパクの食事に比べて食事誘発性熱産生が高く、満腹感がより長く持続する』
と記しています。
そして、その結果として
『高タンパクの食事は低タンパクのそれに比べてより多くの体重と体脂肪の減少に繋がる』とし、
『食事内の精製された炭水化物の一部を、飽和脂肪酸の低いタンパク質に置き換えることは効果的であるだろう』
と結論づけています。
■最後に
『高タンパク低脂質の食事』。 昨今よく目にしたり、聞いたりしますよね。もちろん今回紹介している食事誘発性熱産生に関連した事だけに留まらず、多くのメリットがこの『高タンパク低脂質の食事』にはあります。 多くのメリットの中の一つとして今回紹介した事を踏まえて食事内容、PFCバランスに目を向けてみてはいかがでしょうか。
記事を書いたトレーナー
APTROOM豊岡店 東山英樹
参考文献
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